新着メールもなければ着信の履歴もない。
そもそもわざわざ確認しなくたって、今日一日自分のスマホは震えなかったことくらい自分が一番よく知っているじゃないか。
こんなことは初めてだ!ちくしょう!腹が立つ!これは文句の一つでも言わないと治らない!
そうだ、だからこの電話は文句を言う電話であって、決して寂しくて声が聞きたいからではない。
プレイルームからオープンテラスに入り、人がいないことを確認して通話ボタンを押した。


「もしもし?」

もさもさもさもさ…

「おい!?」
「ふぉ、ふぉい?」
「…」
「ふぉしふぉし、あるい?なんかひょうし?」
「…おい、」

もさもさもさもさ…

「おい!てめぇーなんか食ってんだろぃ!!」
「ふぁって、きゅうにへんわきたあら!」
「早く飲み込め!バカ」
「だって、急に電話来たから…」
「で、なぁに?」
「別に特になんもねーよ!」
「何それー!」


◇◆◇


「えっと、なんだっけ?R18の合宿だっけ?」
「それどんな合宿だよ!U-17だよ!お前どんだけバカなんだよ!」
「だってよくわかんないんだもん…」
「何がだよ」
「…ただでさえ部活とかもよくわかんないのに…合宿なんて全然想像つかないよ。電話とかメールもさ…どのタイミングが邪魔にならないかとか…迷惑じゃないかとか…」
「…迷惑じゃないから…」
「…ほんと?」
「だから少なくても1日1通はよこせ」
「そんなに話すことない」
「おい!」
「だって、ずっと家でゴロゴロしてるから特に何にも報告するようなことないんだもん…」
「…合宿終わったらどっか連れてってやるよ」
「ほんとに!わーい!」


腕をあげて喜んでる姿が眼に浮かんでこっちも笑みが溢れる。
それから取り留めのない話を少しして「じゃあね」って言われて電話を切られた。

ふぅと息を吐く。何やってんだ俺は。
今までの交際はメールだって電話だって、デートだっていつも相手から言われてやっていたことだ。別に今までそれで何の問題もなかった。
が、は違う。
メールはよくて2、3日に何通かするくらい。電話なんてほとんどしたことない。
こっちが拍子抜けするぐらい今まで通りの友達状態だ。
この間なんて久々に部活ねぇから一緒に帰ろうと誘ったらものすごい目ん玉あけてびっくりしてた。なんだそれ。
あいつ自分が俺の彼女だって自覚はあるのだろうか。ねぇんだろうな。はぁ、なんで俺、と付き合ってんだろ。
そんなことを鬱々と考えていたら携帯がブルリと震えた。「電話ありがとう 明日もがんばってね!おやすみ!」という簡単な内容がいくつかの可愛い絵文字に飾られている。
俺は眠りにつくまで少なくともそのメールを20回は読み直した。









それではタイトルをもう一度、大声で!