「お前は少し頑張り過ぎるところがあるからな」
「自分の限界を知ることも大事だぞ」
「お前は“そのままでいい”から。無理すんなって。」
そんなこと言われたってもう15年生きてきたんだ。
“がんばりすぎ”というあたしの性格はちょっとやそっとじゃ直らない。
生徒会、文化祭委員、マネージャーそれから…それからなんだっけ?
別に全部嫌々やっているわけではない。
確かに最近は忙しすぎて、ちょっと辛いのは認めるけど。
全部自分で選んで、自分で決めたことなんだ。
だからあたしは逃げたり、弱音を吐いたりしたくないだけ。
まぁ、プライドの固まりって言われたらそれまでだけど。
ぐるぐると、しなきゃいけないことが回り続ける。
でも同時に回ってるとなりで忍足の顔がチラついてる。
もうしばらくゆっくり話していない気がする。
メールすらろくに返してない。
忍足に会いたい。
「(忍足に会いたい。)」
瞼が重たい。
「………おーい!」
「っ!うわぁ!はい!です!!」
「名前なんて聞いてへんよ?」
「え?あ!忍足か…びっくりした。何?何か用?(忍足だ!)」
「あ、部費のことやねんけど……って、いろいろいつもに増して忙しそうやね。」
久々に見る忍足はいつもに増してかっこよく見えて、ちょっと涙が出そうになった。
「うん、まぁ文化祭とかいろいろ近いしね。」
「あんま寝てへんの?顔色あんま良くないけど」
「そう?今日はえっと…2時間は寝たよ。」
「っ2!それ大丈夫なん?」
「大丈夫じゃん?」
本当に大丈夫なのか実際自分でもよくわからない。
強がって、強がりすぎて弱音が吐けなくなってるのも確かで。
でも、そんなことはどうだっていいんだ。だってそれは結局は自分の問題なんだ。
それより何が一番ダメって、一番は周りに気を回らなくなるところだと思う。
自分で手一杯で、人の気持ちに疎かになってしまう。
「大丈夫ならええねんけど。最近メールもあんま返って来おへんし。」
ほら。
メールくらい返せよ。あたし。
忍足に心配させてどうする。
「ごめん。ごめんね。」
疎かになんてしたくないのに。
忍足のこと大事なのに。
「……まぁ、メールなんてどうでもええねん。が忙しいならしゃあないし。せやから、そんな泣きそうな顔して謝らんといて。俺、そんなに鬼とちゃうよ?」
しょうがなくない。しょうがなくないよ。
忍足はどんなに忙しくてもメール返してくれるじゃん。
「ほんと、ごめん。」
謝ったって、忍足は苦笑いするだけなんだ。
そんな顔させたいわけじゃないのに。
会えたら、笑顔で、それから、それから、
「……ほんまはここは無理せんときって言うところなんやろけど、きっと今更に無理すんなって言ったって、それこそ無理な話やろ?」
確かに今更“そのままでいい”なんて言われても無理な話だ。
みんなそう言ってくれるのうれしいのだけれど、結局あたしはみんなに言う“そのまま”にはなれないのだ。
性格はそうそう簡単に変わるもんじゃない。
小さくうなずくあたしの頭を忍足がそっと撫でる。
「ええやん。頑張ってる好きやで。」
「でも、たまには俺とか頼ったって。そこは彼氏面したいやん。」
忍足のすごいところは人のプライドを傷つけずに慰められることだと思う。
こういう奴こそ人のことばっかりで自分のことは疎かにしてしまうんだ。
あたしとは真逆だ。
実際うちのテニス部はめちゃくちゃキツイ。コイツはそこのレギュラーなのだ。
ちょっとの期間だけ忙しいあたしとは、比べものにならないくらい疲れてるはずなのに、元気のない姿はみたことない気がする。
少なくともあたしは。
「あたしばっかごめんね。」
「今日のはしおらしゅうて可愛えなぁー」
茶化したって伝わる忍足の優しさ。
あたしは、いつだって救われてる。
「ありがとう。」
あたしのとなりにいてくれて、
「ありがとう。」
でも助けられてばかりのあたしは、いつまでこの優しさのとなりにいられるのだろう。