不二に今日手塚に言うといったら、はじめは「おぉ!」と嬉しそうに喜んだのに、話す内容をいったら「ばかじゃないの。」って呆れられた。
「そんなことしてると大事なモノ手放すよ。」
だって。
「手塚。」
「なんだ?」
「ちょっと話あるんだけど。」
部活はもう引退してて、きっとこの時間に残ってるってことは生徒会だったのだろう。
静かな廊下を一人で歩いていた電柱みたいな大きな背中はやっぱり悔しいくらい大好きな手塚そのものだ。
「手塚、あんたテニス大事よね??」
「あぁ。なんだ急に?」
普段でも険しい顔がより怪訝そうに歪んだけど気にせず、質問を続ける。
「きちんとやってて、将来もそれなりにテニス方面で考えちゃったりしてるよね?」
「まぁな。??」
「じゃぁ、彼女なんてこれぽっちも欲しくない!そうでしょ?」
「なんの話をしてるんだ?」
「いいから、“うん”って言って!!」
何に迷う必要があるんだ。答えはわかってるんだ。
ただ手塚の言葉で安心したいだけなんだ。
「………別に欲しくないわけじゃないぞ。」
「は?」
「なんだ?それがそんなにおかしことか?俺だって一応普通の男子高校生だぞ。」
本当に予想外だ。
まさか。
質問しといてなんだけど、肯定以外の答えが返ってくるなんて思わなかったんだ。
「おい?それがどうしたんだ?」
「………わ!びっくりしすぎて今一瞬フリーズしてた。」
「そんなに吃驚することか?」
「するよ!何言ってんの!!手塚が“彼女欲しい”って言ったんだよ!ありえない!!」
「……俺を怒らせたいのか?」
「それはこっちのセリフよ!まぁいいや、今のは聞かなかったことにしてあげる。もう一回仕切り直しましょ。」
「?」
「“彼女なんてこれぽっちも欲しくない!そうでしょ?”答えは“はい”または“Yes”で答えてください。」
「……いったい何なんだ?解らない事で自分の考えは変えられない。理由を言え。」
理由なんて簡単だ。
それくらい頭のいい手塚なら気づいてよ!なんのために眼鏡をかけてるんだ!(視力が悪いからだ。By手塚)
「……理由は“あたし”じゃダメ?“あたしがそう言ってほしい”からじゃダメ?」
「…………。」
「手塚のケチ!」
「おい!!」
「何なんだ。いったい……」
「要は手塚に一生独り身でいてほしいんじゃない?」
「!!!っ不二!!!」
「叶えてあげなよ。好きな子の願いくらい。」
「全部聞いていたのか?悪趣味だぞ。」
「だって声大きいんだもん。」
「……俺は脈なしってことなのか?」
「さぁ?」
「不二…お前楽しそうだな。」
「別に。じゃ、頑張って手塚。」
2人のそんな会話なんてあたしはこれっぽっちも知らなくて。
翌朝また不二にバカにされる。
「てゆーか、なんで自分が告白して彼女になろうって考えをもたないの?」
「だってー」
「だって?」
「別にあたしのものにならなくていいから、他の人のものにならないでほしいだけだもん!」
「ボク…今初めて心底手塚が、可哀想だと思ったよ。」
結局不二の言うことを理解できないあたしは手塚とは結ばれない。