先輩ー!!」

「何よ。」

「クリームコロッケ作ってーーーーー!!!!!!」





「はぁ?あんた何言ってんのよ。急に人の家に入ってきて。まず手を洗ってー

「今日の夕飯はクリームコロッケがいいっス。」
切原赤也。17歳。神奈川県立海大学付属高等学校三年生。

「あのねー、いつも言ってるけどこんな時間に夕食の献立言われてもさぁ。一体何時にご飯食べるき?」
。18歳。某大学一年生。独り暮らし。

「何時になってもいいからさぁー。ついでに明日は朝練ないっス。」
二人は一応恋人同士。
(ちなみに“明日は朝練ない”というのは“今日泊まらせて”と言う隠語。)




「てか、なんでクリームコロッケ??めんどいからヤーダ。」

「えー。お願いしますよー。俺今無性にクリームコロッケ食いたいんスよっ!!」
独り暮らしにしては広いリビングに大きなソファー。二人なんて余裕で座れる。

「もう煮物煮ちゃってるんだけど。」

「ねっお願い!!俺も手伝いますからー。」
そう言われて頬にキスされればあたしが溜息をついて承諾するなんて決まり事。
これだから幸村とかに甘いと言われるんだろうな。





「まだダメっスかぁ?」

「ダーメ。」

「もうへとへとっスよー。腹へって死ぬー。もうこのまま食ってやるっ!!」

「食べてもいいけど、まだなんも味しないわよ。」

「塩振って食ってやるっ!!もう疲れたぁ限界っ。」

「自分で手伝うっていったんでしょっ!ほらっ手を休めないっ!!」
クリームコロッケの肝心要はいかにホワイトソースをフワフワに作れるかだ。

「ぶー。」

「おいしいの食べたいでしょ?」

「うぅぅーーーー」
赤也は鍋を力一杯かき混ぜる。

「それでよろしい。」
そんな赤也を見ながらあたしは具を刻んでいく。
もちろんエプロンは去年の誕生日に赤也から無理矢理渡された白いヒラヒラハートのエプロン。
こんな光景に慣れたのはごく最近のことで、まだ少し不思議な気分になるけど別に悪い気はしない。





「あー食った、食ったぁー。」

「ごちそうさまでしたは?」

「ごちそうさまでした。」
食べ終わった時間は二十二時をとうに回っていた。

「お味の方は?」
別にあたしは帰りが遅いことも多いから慣れてるけど、赤也はハードな部活の後だったからちょっと疲れてるみたいだった。

「んーもち最高っス!!」
でも満面の笑み。

「そっか。それはよかった。でも


「ん?」


最後のお仕事が残ってますよ?」
人差し指でキッチンを指さす。あたしも負けないくらい笑顔。

料理の後始末、お皿洗いは赤也の仕事。これもあたし達の決まり事。